彼女は一度死にかけて、彼に命を助けられた。
体の中を弄くられて、色々昔とは変わってしまったけれど
彼のお陰で生きていられた。


彼に最初に弄くられたヒトが彼女だった。
最初なので色々と不具合があったらしい。
彼女が動くたびに、体のあちこちから小さな痛みが湧いてでた。
一々痛いと言うのも格好悪いので、彼女は「面倒」
 という言葉を使うようになった。


動かなくなった彼を見つけたのは、彼女だった。
自分の体を弄繰り回し、無茶な仕事を押し付け
それを拒否できない頭にして
良いように利用するために生き長らえさせた人間。
全くロクでもないやつだと思っていた。

動かなくなった彼を見ても、それは変わらなかった。
ただ、頭を弄られていたせいだろうか
このまま、彼をここに置いておくわけにはいかないと思った。

こういう場合は、土の中に埋めるらしい。
彼女が、地球の人から聞いた話
この星が欲しいと望んでいた彼は、この星の土になるそうだ。
なんだかよく分からない気分になったけれど
そうすればいいのならと彼女は土を掘り始めた。

人一人分の穴を掘る
彼に与えられた力を使えば簡単な事だったけれど
それはなんだか癪な気がしたので、
手でゆっくりと土を掘り返していった。

面倒ね…

彼女は呟いた。
その時痛かったのは、体だけではなかったけれど。

 

[PR]動画