船が壊れた後も彼は生きていた。 地球の方の守り神様が助けてくれた。
彼は、生まれてから今まで、ずっと必要とされていた。 子どもの頃から誰よりも頭が良くて、皆の住処をずっと管理しつづけていたから。 彼のお陰で、住処はそれまで以上に住みやすくなった。 彼のお陰で、沢山の人が助かった.。 彼のお陰で、新しい住処まで見つかった。
でも彼は、皆から好かれてはいなかった。 生まれてからずっと大切にされ過ぎて、彼の心は上手く育たなかったから。 彼がいなければ、今の暮らしがなくなってしまう だから誰も何も言わなかったけれど、彼の事を好きな人なんかいなかった。
彼が大地に降りた時、皆は喜び笑いあっていた。 これからの事を、本当に楽しそうに話しあっていた。 地球の皆と宇宙にいた皆、一緒に頑張っていこうと、手をとりあっていた。 彼を見てる人は誰もいなかった。
「強い部下が欲しい」 そう思って造った部下は皆弱かったし 自分だけの星が欲しいと、死に物狂いで見つけた星には人がいた。 皆は自分を必要としていると信じていたのに、今はきっと、もう誰も自分を必要としていない。
目の前にある全てを壊してやりたかった。 でも、そんな方法はもう、たった一つしかなかったので、彼は迷わずそれを実行した。 荷物の中から取り出した一粒のカプセルを、口に放り込んで、水も使わずに飲み込んだ。 その瞬間、目の前の物全てが霞んで消えて、あたりは真っ暗になった。 これで楽になる…そう思ったけれど、彼の心は、最後までずっと苦しかった。
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